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小学校の勉強に潜む、記号接地していないと難しいシチュエーション4選

2026.06.03

小学校の勉強に潜む、記号接地していないと難しいシチュエーション4選

前回のnoteは、「地頭がいい子は、ありふれた言葉・数字の『たつじん』なだけ」

地頭がいい子は特別な力を持っているわけではなく、ありふれた言葉・数字がちゃんと記号接地しているからこそ、応用問題が解けたり、難しい言葉が使えたりするというお話でした。

▽前回までのnoteはこちらから

今回は、実際に小学校の学習内容を調べてみたところ、「記号接地の不足が原因でつまずきやすいのではないか」という問題や説明がたくさんあったので、いくつかご紹介します。

お子さんがどこにつまずいているのか、チェックしてみてくださいね。

目次

  1. 記号接地が原因でつまずきやすい?
  2. Case 1:『ごんぎつね』のお葬式の場面で「死体を煮ている」?
  3. 「小4の壁」も記号接地していないからぶつかる!?
  4. Case 2:理科の教科書の説明「透明なところから『取り出す』」って何?
  5. Case 3:社会の教科書の説明 輸入と海に面していることの関係性とは?
  6. とはいえ、全部体験するのは難しい……。どうすれば?
  7. Case 4:戦争やリストラなど……体験したことがない題材が出題される
  8. 子どもは推論の天才。だから、推論できるだけの情報が記号接地していれば大丈夫

記号接地が原因でつまずきやすい?

お子さんは、ちゃんと教科書を読んでいるし、授業も真面目に聞いている。
けれども、いまひとつテストの点数につながらない……。

実は、前提知識が記号接地していないとそれも仕方ないんです。

記号接地とは、自分の体験と結びつけて理解すること。
例えば、「いちご」という言葉を、辞書を引けばわかる「甘い」「赤い(白いものもある)」「バラ科」のような情報だけではなく、いちごを実際に食べて初めて理解できる「味」や「香り」まで理解することを指します。

実は、教科書に出てくる描写は子どもが体験していないことも多く、記号接地しにくい部分があるんです。そこが、各教科でつまずきポイントになります。

Case 1:『ごんぎつね』のお葬式の場面で「死体を煮ている」?

まずご紹介したいのは、国語の授業で『ごんぎつね』を扱った時のエピソード。
文春オンラインで公開された記事で紹介されていたエピソードです。その記事では、小学生が『ごんぎつね』のお葬式の場面を正しく解釈できないと書かれていました。

『ごんぎつね』 作:新美南吉 絵:黒井健 偕成社

その場面は、兵十の母親のお葬式で、女性たちがかまどで何かを大きな鍋でぐずぐず煮ている描写。「女性たちは何を煮ているか?」という質問に、子どもたちはこのように答えたのだそうです。

「この話の場面は、死んだお母さんをお鍋に入れて消毒しているところだと思います」

「私たちの班の意見は違います。もう死んでいるお母さんを消毒しても意味ないです。それより、昔はお墓がなかったので、死んだ人は燃やす代わりにお湯で煮て骨にしていたんだと思います」

「昔もお墓はあったはずです。だって、うちのおばあちゃんのお墓はあるから。でも、昔は焼くところ(火葬場)がないから、お湯で溶かして骨にしてから、お墓に埋めなければならなかったんだと思います」

「うちの班も同じです。死体をそのままにしたらばい菌とかすごいから、煮て骨にして土に埋めたんだと思います」

出典:「死体を煮て溶かしている」『ごんぎつね』の読めない小学生たち…石井光太が明かす“いま学校で起こっている”国語力崩壊の惨状 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』#1|石井光太|文春オンライン

▽記事はこちらからご覧いただけます。

「死体を煮て溶かしている」『ごんぎつね』の読めない小学生たち…石井光太が明かす“いま学校で起こっている”国語力崩壊の惨状 | 文春オンライン少年犯罪から虐待家庭、不登校、引きこもりまで、現代の子供たちが直面する様々な問題を取材してきた石井光太氏による、教育問題bunshun.jp

記事には、子どもたちはふざけているわけでもなく、真剣に議論していたと書かれています。
子どもたちの発言は衝撃ですが、これまでお話ししてきた「小学校の勉強には記号接地が大事」という見方をすると、このような発言が出てくる理由もわかってきます。

ポイントは、冒頭にも書いた「子どもが体験していないこと」です。

子どもたちは、

  • そもそもお葬式を体験したことがない
  • かまどを見たことがない
  • 村中に振る舞うくらいの大きな鍋で煮炊きするところを見たことがない

この場面だけでも、こんなに知らないことだらけです。
そもそも『ごんぎつね』の書かれた時代の生活様式と、子どもたちの生活は離れすぎていて、普通に生活していても記号接地できません。だから、子どもたちは無理やり「わかる形」で解釈してしまうのです。

ですが、小学校の学びでは、私たちが体験できない過去の出来事や、海外の暮らしも「常識」として登場します。これらを自分の体験と結びつけること(=記号接地)ができないと、子どもは「文字としては読めても、理解できない」という状態になりやすいのです。

「小4の壁」も記号接地していないからぶつかる!?

実は、「文字としては読めても、理解できない」状態になりやすいのが、小学4年生ごろ。
学習内容のレベルが上がり、つまずく子どもが最も多いのがこの時期で、「小4(9歳)の壁」とも呼ばれています。

小学4年生になると、勉強の難易度がグッと上がるのも小4の壁の原因の1つです。算数や理科などは、とくにイメージのしにくい抽象的な概念の問題が増えてきます。そのため、勉強に対して苦手意識を持ちやすく、「ついていけない」とつまずいてしまう子どもも少なくないのです。

出典:【小4の壁ってなに?】原因やのり越え方、保護者のNG行為とは?|学研|こそだてまっぷ 

【小4の壁ってなに?】原因やのり越え方、保護者のNG行為とは?  | こそだてまっぷ「小4の壁」とは、10歳くらいの子どもが、放課後の居場所がないと感じたり、学校の勉強についていけず劣等感をおぼえたり、といkosodatemap.gakken.jp

第1回のnoteで紹介した、子どもがつまずきやすい「分数・小数の変換」も、小4ごろに習う単元です。

Case 2:理科の教科書の説明「透明なところから『取り出す』」って何?

理科の教科書は、普段の生活では聞かない単語や言い回しがたくさんあります。
文字は追えるけれど、頭には入ってこない……なんてことになりやすいんです。

例えば、こちら。

水よう液の温度を下げると、水にとけたミョウバンはとり出すことができますが、食塩はほとんどとり出すことができません。

出典:『新しい理科 5』|東京書籍 ※令和6年度版

子どもの視点で見ると、この説明は理解しにくい部分があります。
まず「ミョウバン」は日常でほとんど耳にしない語で、自分の体験と結びついていないため、戸惑います。

また、「水よう液から取り出す」という表現にも、「透明なところから取り出すってどういうこと?」と困ってしまいます。
子どもにとって、「取り出す」は「箱から物を取り出す」という動作を指しています。そこに、透明の液体から抽出する、という別の意味での「取り出す」が出てくると、非常に解釈しづらいのです。

「箱から取り出す」と「水よう液から取り出す」の違い

理解しやすいように、教科書では写真つきで説明するなどの工夫もされています。ですが、それで理解できる子どももいれば、一度ではイメージがつかない子どももいます

授業で実験をしたり、家で飲み物に砂糖を溶かしたりした経験が何度かあればイメージがつくようになりますが、そうした経験がないまま説明を読んで理解するのは大人が思っているよりも難しいものなのです。

Case 3:社会の教科書の説明 輸入と海に面していることの関係性とは?

同じく社会も、幅広く記号接地を求められる科目と言えます。
例えば、こちら。

鉄を作る製鉄所は、瀬戸内海や東京湾のまわりに多く見られます。鉄をつくるのに必要な原料である鉄鉱石と、むし焼きにしてコークスになる前の石炭は輸入にたよっているので、製鉄所は海に面した場所につくられているのです。

出典:『新しい社会 5(下)』|東京書籍 ※令和2年度版

まず、鉄鉱石やコークスといった、社会の教科書以外ではなかなか見ない名詞です。
また、瀬戸内海や東京湾といった地名は、行ったことがなければニュースや天気予報で見かける程度でしょう。これらが、必要な時に取り出して使える「生きた知識」になっていないと、文章を読めても理解できません

そして、「輸入にたよっているので、製鉄所は海に面した場所につくられているのです」という表現。一見自然ですが、「材料が船で運ばれてくる」という書かれていないけれど大事な情報が隠れています。この映像を、とっさにイメージできないお子さんもいるのです。
※もちろんいきなりこの説明がされるわけではなく、製鉄業について学習する前に、「輸入」についての学習がありますが、それでも難しいですよね。

うまく自分の体験と結びつけて記号接地していたら、豊かにイメージが描けます。すると、理科ならミョウバンと食塩の差が、社会なら他の産業との差が理解できて、勉強は楽しくなる。
けれども、記号接地していなかったら、これらの説明の全部が丸暗記になってしまって勉強は苦しくなってしまいます

とはいえ、全部体験するのは難しい……。どうすれば?

幅広く記号接地が求められるとはいえ、小学生の10年ほどの人生では全て体験するのは難しいですよね。地理が大事だからといって全国各地に行くことはできませんし、製鉄を実際に体験するのも難しいものです。

さらに、小学生がする勉強の中には、『ごんぎつね』のように子どもが体験したことがないシーンや題材も選ばれます。

Case 4:戦争やリストラなど……体験したことがない題材が出題される

例えば、1学年に1つは戦争を扱ったお話がありますよね。これも子どもが体験したことがない場面を想像する必要がある題材です。

とはいえ、これらは知らない前提で「知ってほしい」という思いで扱われている部分も大きいでしょうから、ある程度読んでいく中で記号接地していけば良い題材でもあります。

ですが、いきなりこういう題材のお話を読んで問題に答えないといけない場合もあります。

中学受験対策のテキストには、リストラされたサラリーマンの気持ちを答える問題が出ることがあります。大人でも立場が違うと想像するのが難しいような問題です。
難関校では、このような体験だけでは記号接地できないテーマを扱うことが多いようです。

これらはもちろん体験できません。
ですが、解ける子は解ける問題です。全部体験する必要はなく、推論できればいいのです。

子どもは推論の天才。だから、推論できるだけの情報が記号接地していれば大丈夫

子どもは推論の天才ですから、推論できるだけの情報が記号接地していることがまず大事です。そこからは推論の力を使って想像していくことができます。

リストラされたサラリーマンの気持ちを問う問題でも、必ずしも「サラリーマンのリストラ」について詳しく知っている必要はありません。推論できるだけのパーツが集まっていればいいのです。

例えばこれまでに読んだ本に、お父さんが「サラリーマン」と呼ばれている描写があったなら、「お父さん」「大人」「サラリーマン」「大変」「仕事」などの言葉が同じ文脈で出てくることを知っています。
サラリーマンがリストラされるシーンにもそれらの言葉が登場したら、これらの言葉をヒントにして、状況を想像してみることができるようになります。

このように実際に体験したことがなくても、「この言葉が出てくる文脈にはこの言葉も出てきやすい」という実感を伴った言葉への記号接地があると、映像を思い描けて問題を解ける可能性がグッと上がるのです。

こうした「言葉同士のつながり」をたくさん知ることが、体験していない物事への理解を助けてくれます。

そして、「言葉同士のつながり」を知るための一番の近道は読書です。本というボリュームある文脈の中で言葉を知っていくことは、子どもの記号接地の入り口になります。


▽次回タイトルは、
「常識は本で育つ!──読書は記号接地の入り口」


学校のテストを解けるようにするために、たくさんの本を読むのは遠回りだと思っていませんか?
実は、読書は一番の近道と言えるかもしれません。
「水よう液からミョウバンを取り出す」
「リストラされたサラリーマンの気持ち」
これらがスラスラ理解できる地頭のいい子は、自分の読書「体験」と結びつけて考えているんです!

きぬ

ヨンデミー 編集部