読書が学びになるのは、どんなとき? ──「好きな本を楽しむ」が大切な理由
2026.08.02

お子さんの読書が学びにつながってほしいと思うほど、「何冊読めばいいのだろう」「もう少し難しい本を読んだ方がいいのかな」と気になることがあります。
けれど、読書の学びは、冊数や本の難しさだけでは決まりません。結論から言うと、まず大切にしたいのは、お子さんが好きな本を楽しんで読むことです。
なぜ、楽しむことが学びにつながるのでしょうか。これまでの記事で紹介した「アブダクション推論」と「スキーマ」から考えてみます。
※5本の連載とお伝えしましたが、構成の都合上最後の2本分の内容をこちらの記事1本でお届けします。
読書中のお子さんの頭の中は?
知らない言葉に出会ったとき、お子さんは前後の言葉や絵から、その意味を考えます。登場人物がふいに黙ったときには、会話やそれまでの出来事から、その気持ちを考えることもあります。
そのとき、お子さんは、文章や絵という手がかりと、自分の知識や経験を結びつけて、「こういうことかもしれない」と考えています。これが第2回でお話しした「アブダクション推論」です。
▽第2回の記事はこちらから
そして、推論の大切な材料の1つが、第3回でお話しした「スキーマ」です。読書中のお子さんは、自分がすでに持っているスキーマを使って、言葉や物語の意味を組み立てています。
▽第3回の記事はこちらから
推論を重ねる中で、点のようにあった知識同士がつながり、言葉や物語全体の意味が少しずつ立ち上がっていきます。
読書中のお子さんは、ただ文字を追うのではなく、頭の中で意味をつくり続けているのです。
学びにつながりやすいのは、推論が多く起こる読書
では、文字を追っていれば、どんな読書も同じように学びにつながるのでしょうか。実は、そうとは限りません。
私たちは、学びにつながりやすいのは、推論が多く起こり、お子さんが自分の頭で考えている読書だと捉えました。
「この言葉は、こういう意味かな」
「この人は、どうしてこんなことを言ったのだろう」
「思っていた展開と違う。何か見落としていたかな」
このように仮説を立て、新しい手がかりと合わなければ、考えを修正する。その繰り返しの中で、もともと持っていた知識に新しいことが加わったり、ものごとの捉え方が組み直されたりします。
では、どんな本なら、お子さんは前のめりになって推論できるのでしょうか。その答えの1つが、お子さんの好きな本です。
「もっとわかりたい!」を引き出す好きな本が、学びにつながる
好きな題材について、お子さんは他の題材と比べて知識を多く持っているでしょう。つまり、読むために必要なスキーマを十分に持っています。
そのスキーマを足場にできるので、文章にすべては書かれていない部分も補いやすくなります。その結果、推論が進み、知識を増やしていくことができます。
しかも、好きな本なら、「先を知りたい」「もっとわかりたい」と思えます。お子さん自身が手がかりを探し、「こういうことかな」と考えながら、前のめりに読み進めやすくなるのです。
今井むつみ先生は著書『プレイフルラーニング』の中で、知識は大人から子どもへ、そのまま移せるものではないと説明しています。子ども自身が、今ある知識を使って考え、新しいことを発見しながら、知識を組み替えていくことが大切です。

一見すると「ただ好きな本を楽しんでいるだけ」に見えても、その頭の中では、今ある知識を使った推論が続いているかもしれません。楽しんで読むことは、お子さんが自分の頭で考え、そこから世界を広げていく入り口になるのです。
反対に、お子さんにとって難しい本やこれまで読んできていないジャンルの本だとどうでしょうか。
知らない言葉が多すぎたり、背景となるスキーマがまだ十分になかったりすると、推論の手がかりを見つけにくくなります。大人に置き換えるなら、あまり慣れていない外国語で書かれた本を読む感覚に近いかもしれません。
そうすると、文字を追うだけで精いっぱいになり、言葉や物語の意味を考えるところまで進みにくくなり、結局文字を追っただけで頭に入らなかった……ということになりかねません。
ですから、大切なのは、どれだけ難しい本を読めるかではなく、お子さんがその本を楽しみ、楽しむ中で自然と学べているかどうかです。
好きな本を読んでいる姿は、学んでいる姿
同じ本を何度も読むことも、立ち止まっているわけではありません。読み返す中で、言葉の意味が少しずつ確かになったり、前には気づかなかった登場人物の気持ちに気づいたりすることがあります。
好きなシリーズを読み重ねるうちに、登場人物や物語の世界について新しい知識が加わり、それまでの見方が組み直されることもあるでしょう。
お子さんは好きな世界に閉じこもっているのではなく、その世界で得たスキーマを足場にして、見える世界を広げている最中なのかもしれません。
読んだ冊数や、難しい本を読めたかどうかは、外から見えやすいものです。けれど、お子さんの頭の中で起きている推論や、知識の組み替えは、すぐには見えません。
だからこそ、まずは、お子さんが好きな本を楽しんでいる姿を「学んでいる最中の姿」として見守ることを大切にしてみてください。
「どんな本を、どう読めばいい?」をウェビナーで
ここまで、アブダクション推論とスキーマから、読書が学びにつながるときに何が起きているのかを見てきました。
では、お子さんが前のめりになって推論できる本には、どうすれば出会えるのでしょうか。大人は、どのように足場をかけ、どこから見守ればよいのでしょうか。
ウェビナー「(子どもの)学びのメカニズムから解き明かす『本を読んでいれば大丈夫』なワケ——ヨンデミー顧問・今井むつみ先生の知見をもとに」では、これまでの記事で紹介してきた言葉をつなぎながら、「本さえ読んでいれば大丈夫」そう言える理由と読書を学びに繋げるために大切なポイントをお伝えします。
「本を読んでいれば大丈夫」という言葉を、どんな本でも読ませればよいという意味ではなく、お子さんが自分の頭で考え、学び続けられる読書とは何かという問いから、一緒に捉え直していきます。
▽参加はこちらから
8/3(月)11:00〜12:00 Zoomにて開催いたします
▽ご参加は以下のページの申し込みフォームからお願いいたします。


