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常識は本で育つ!──読書は記号接地の入り口

2026.06.03

常識は本で育つ!──読書は記号接地の入り口

前回までに、地頭は記号接地(言葉や数字などの「記号」が、自分の体験と結びつくこと)で説明できるというお話をしてきました。
子どもが学習につまずいてしまう原因として、習う単元それ自体が難しいことももちろんあります。ですが、つまずきのきっかけになっているのは、それ以前の常識であることも多かったのです。

▽詳しくは前回までのnoteをご覧ください。

こうした常識につまずかずに問題を読めれば、今は勉強が苦手なお子さんだとしても推論の力を使ってどんどん問題が解けるようになります!

では、どうしたら常識に記号接地できるのでしょうか?
「常識を埋めるなんて、途方もなく感じる」
「わが家でもできるの?」
不安に感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。
おうちで取り組んでいただきたいことは一つ、読書です。

目次

  1. 記号接地につながる読書のポイント「楽しく、たくさん、幅広く」
  2. 簡単すぎるかもという心配はいらない? 楽しく読める本の効果
  3. 推論のチャンスは何度も必要。たくさん本を読む効果
  4. 常識に記号接地するための近道? 幅広い読書の効果
  5. 地頭を育てるために、特別な取り組みはいらない

記号接地につながる読書のポイント「楽しく、たくさん、幅広く」

記号接地するための読書のポイントは3点。
「楽しく、たくさん、幅広く」です。

簡単すぎるかもという心配はいらない? 楽しく読める本の効果

楽しく読める本は記号接地につながります
「子どもが楽に読める本は簡単すぎる、学びにならない」と思ってしまうことはありませんか?
実は、お子さんが楽しんで読める本だからこそ、効果があります。

読書教育では、8割程度理解できる本が学習効果があると言われています。
それ以上わからない言葉が多いと初めて出会った言葉やシーン、概念について推論しづらく、文字を追うのに精一杯になってしまいます。すると、本の内容を楽しむことができませんし、記号接地も進みません

こうした楽しくない経験は文章を読むこと自体への苦手意識につながり、学校の勉強も文章を読みたくないから避けるようになっていきます。

実際、ヨンデミーには「文章を読むのが苦手で学習につまずいてしまった」というエピソードが集まってきます。
例えば、暁さん。

💡テストの点数を見て焦ったこともあったけれど……読めればできる子でした!
お子さんが文章を読むことが苦手で、小学校に上がって勉強で大きくつまずいてしまいました。カラーテスト(※平均点は85点程度)の点数がとても低くて……20点、30点、40点といった数字が返ってきたんです。

でも、読書をしばらく続けて「読むことへの自信」さえついたら、勉強も怖いものではなくなったみたいです。通信教育と文章題のドリルに、学校から帰ったらすぐ自分から取り組み出して。「このまま賢い子になってしまうんじゃないか!?」と思いました(笑)

前向きに勉強に取り組むようになった、暁さんのお子さん。

暁さんのお子さんは、読むことを楽しめる状態になったからこそ、本や文章だけではなく、学びへの向き合い方まで変わったんです。

推論のチャンスは何度も必要。たくさん本を読む効果

楽しめる本だからこそ記号接地できるとはいえ、推論のチャンスは複数回ないと記号接地しません。出会った言葉や概念を自分の持っている知識と照らし合わせて考える機会が何度もあると、だんだん記号接地していくのです。
だからこそ、たくさん読むことが大事になります。

教科書に登場するありふれた言葉や数字だとしても、単語帳に載っている例文一つで理解するのは難しいものばかりです。「等しい」という言葉の意味を「近い」や「大きい」と誤解している子どもが多かったのも、算数の教科書の中でしか出会わなかったためです。
子どもにとって馴染みが薄く、目に見えない「概念」だとさらに理解しにくくなります。

例えば、「正義」という概念について考えてみましょう。
辞書を引くと「正しい道理。人間行為の正しさ。」と出てきます。ですが、これを読んで「正義を完全に理解できた!」という人はいないのではないでしょうか?
こうした概念に記号接地するために、たくさんの本を読むことが大事なのです。

子どもたちは、たくさんの本を読む中でいろいろな「正義」に出会います。
例えば、「アンパンマン」ではお腹がすいている人に食べ物を分け与えるのが正義として描かれますが、『走れメロス』ではどんなに厳しい場面でも友情を守ることが正義として描かれます。
子どもたちは、それぞれの正義を比べながら推論することで、正義に共通するルールを自分で見つけていきます。このように推論をして共通点を見つけることが、正義の定義に記号接地することにつながります。

学校の勉強でも、実は概念のさまざまな描き方に触れられるカリキュラムになっています。
例えば、戦争を扱った文章は3年生から4年間にわたって扱います。
小学4年生の教科書で扱う『一つの花』と小学5年生で扱う『たずねびと』では、全く違う視点から戦争が描かれています。

こちらは『一つの花』の一部です。
この作品では、戦時中に家族が戦地へ向かう様子が描かれます。

「みんなおやりよ、母さん。おにぎりを──。」
お父さんが言いました。
「ええ、もう食べちゃったんですの──。ゆみちゃん、いいわねぇ。お父ちゃん、兵隊ちゃんになるんだって。ばんざあいって──。」

出典:『国語 五』(光村図書、令和2年度版)より『一つの花』

『一つの花』では、戦争中にはおにぎり一つが貴重なこと、父親が兵隊として戦地へ向かったまま帰ってこなかったことが描かれ、子どもは戦争について理解していきます。

こちらは『たずねびと』の一部です。
現代を生きる小学生が原爆について知る過程が描かれます。

「楠木アヤ」──かっこの中には年れいも書いてあった。(十一さい)──年れいも同じ。
──びっくり。だれかが、わたしをさがしてるの。
だが、もちろん、そうではなくて、ポスターのいちばん上には『原爆供養塔納骨名簿』とあった。

出典:『国語 四上』(光村図書、令和6年度版)より『たずねびと』

『たずねびと』では、同じ名前の、原爆で亡くなった子どもの存在をきっかけに、原爆で約14万人もの人が亡くなったことや、今も原爆の死者の遺族を探している人がいることなどを知ります。

戦争も正義と同じように、一面を知っただけでは記号接地できないもの。
こうした大切なテーマほど、時間をかけて何度も出会い、さまざまな側面から理解しながら「平和」に記号接地していってほしいのです。

常識に記号接地するための近道? 幅広い読書の効果

最後に、常識に記号接地するには幅広く読むことも大切だというお話をさせてください。
幅広く読むことが大切な理由は、小学校の学習に求められる常識の幅が広いからです。ありふれた言葉や数字や『ごんぎつね』に登場するような日本の昔の生活、社会で登場する日本の地名など……各教科で必要な常識が違うからこそ、幅広い常識が求められます。

幅広く常識に記号接地するためにおすすめなのは、絵本です。
なぜなら、絵本には何気ない日常を描いたものや昔話が多く、子どもが体験しにくい「当たり前」に出会えるからです。

例えば、雪があまり降らない地域に住んでいるお子さんは雪で遊んだ経験も乏しいことが多いものです。すると、小学校高学年のお子さんでも「雪合戦」を知らないことがあります。

そんなお子さんが、もし雪で遊ぶシーンがある絵本を読んでいたなら、「雪で遊ぶと、手が冷えて赤くなる」「ぎゅっと固められた雪玉が当たると痛い」などの体験を、絵と文章をヒントに想像することができるはずです。こうした読書体験が、体験したことがないものへの記号接地につながります。

雪が描かれる絵本を読むことで、体験したことがなくても、雪合戦をしたらどうなるかイメージできるようになります。

『ごんぎつね』に登場するシーンも同じように、昔話でかまどや土間が描かれているのを見たことがあれば、全く知らない時よりは想像しやすくなりますよね。

大人にとっては、雪合戦のシーンも昔話の料理のシーンも何も珍しいものはないかもしれません。ですが、大人にとってはお決まりの展開だとしても、子どもにとっては新鮮な記号接地の入り口になるのです。

子どもたちは、このような読書体験を経て、常識に記号接地していきます。
テストの点数を上げるための対策として読書は遠回りに見えるかもしれません。ですが、小学校の学習に追いつくには常識に幅広く深く記号接地する必要があり、そのためには読書が一番の近道とも言えるのです。

地頭を育てるために、特別な取り組みはいらない

今回までの全4回の連載で、「地頭は生まれつきではなく、育てられる」というお話をしてきました。そう考えるのは、ヨンデミーのご受講生の中に、読書を毎日習慣的にするようになって成長したお子さんがたくさんいるからです。

そんなご受講生さんたちも、体験を増やしたり、トレーニングをしたりといった特別な何かをしたわけではありません。常識への記号接地──つまり、知識と自分の体験を結びつけることを「楽しく、たくさん、幅広く」行っただけ。その方法が、読書でした。

小学生は、教科書に登場するありふれた言葉や数字でも、学習の障壁になってしまうものです。だからこそ、当たり前の知識を当たり前にできるようになるまでサポートしてあげる必要があったんです。

そうした常識さえ身についてくれば、今は勉強が苦手なお子さんでも地頭がどんどん育っていきます。ぜひ、常識への記号接地を意識して、「楽しく、たくさん、幅広く」読書に取り組んでみてくださいね。

きぬ

ヨンデミー 編集部