常識不足だから勉強が苦手になる?──地頭は「記号接地」で説明できる
2026.06.03

小学生のお子さんが勉強につまずいてしまう理由は、各自の勉強のセンスや「地頭」の問題なのでしょうか?
勉強が苦手な子の地頭を育てる方法はないのでしょうか?
ヨンデミーは、地頭は育てられると考えています。しかも、特別なワークや訓練は必要ないとも考えています。
これから全4回の連載で、こちらのお話をしていきます。
📍全4回の構成
・常識不足だから、勉強が苦手になる? 地頭は「記号接地」で説明できる
・地頭がいい子は、ありふれた言葉・数字の「たつじん」なだけ
・小学校の勉強に潜む、記号接地していないと難しいシチュエーション
・読書する子が賢い理由も、記号接地で説明できる
第1回は、テストで点数が振るわない理由を分析し、地頭の正体に迫ります。
目次
- 子どもが勉強につまずくのは、当たり前の知識が記号接地していないから
- どうしてテストで20点……?
- 数字がつまずきのもとになる
- 記号接地していないと、無理やりな解釈で問題を解いてしまう
- 地頭は記号接地で説明できる
- 学校の授業だけだと記号接地しにくいことも……
子どもが勉強につまずくのは、当たり前の知識が記号接地していないから
どうしてテストで20点……?
「どうしてうちの子は勉強ができないの……?」
これは、ヨンデミーのご受講生さんへのインタビューでお聞きした言葉です。
その方は「通信教育をしていたのに、学校のカラーテストでは20点、30点、40点を取ってくるんです」とおっしゃいました。このような、お子さんの勉強に関するお悩みは多くの保護者さまからお聞きします。
一方で、テストはスラスラ解けて、なんなら難しい応用問題も解けてしまうような、いわゆる「地頭がいい子」もいます。
同じように習っているのに差がつくのはなぜなのでしょうか?
子どもが勉強につまずく原因のひとつは、記号接地していないことです。
「記号接地」とは、「言葉や数字(記号)を、現実の体験と結びつけて理解すること」を指します。具体例を挙げて説明します。
例えば、「いちご」という言葉。 辞書を引けば、「甘い」「赤い(白いものもある)」「バラ科」のような情報はわかります。しかし、辞書を引いただけではいちごの「味」や「香り」はわかりません。これらはいちごを実際に食べて初めて理解できるものです。こうした現実の体験と結びつけて、言葉や数字(記号)を理解することが記号接地です。 記号接地していると、例えば文章の中で「いちごよりも甘い木の実だった」と出てきた時に、いちごの味を思い浮かべられます。すると、「いちごよりも甘い木の実」の味も想像することができるのです。 反対に、記号接地してないと情報を丸暗記するだけになり、必要な時に使えない「死んだ知識」になってしまうのです。
英単語を単語帳で暗記しただけだと、英語で話せるようにはならないのも、記号接地していないからですね。
数字がつまずきのもとになる
数字、特に分数や小数は記号接地しにくく、つまずきの元になりがちです。
例えば、こちらの問題。分数と小数を比べる問題は、小学3〜5年生の半分以上が不正解でした。

分数と小数を同時に扱う問題はよくあります。
例えば、割合の問題。0.1と1/10と10%と1割は同じことを表し、場合によって使い分けられています。

これらを一つずつ暗記するのではなく、結びつけて理解していかなくてはなりません。しかし、数字を柔軟に扱えず、割合の考え方を使う問題で混乱してしまうお子さんが意外に多くいます。
記号接地していないと、無理やりな解釈で問題を解いてしまう
お子さんのテストの解答用紙を見て、「どうしてこんな解き方しているの?」「もしかして勘で解いている?」と思ったことはありませんか?
実は、これも知識が記号接地していないことが原因です。
例えば、こちらの問題。
数直線の、71のところに印をつけましょう。
(※0と100だけ書いてあり、目盛りが一切ない数直線が印刷されています)出典:今井むつみ『算数文章題が解けない子どもたち ことば・思考の力と学力不振』
この問題の解答で意外と多かったのが、数直線を無視して、実際の長さで(定規ではかった)17mmのところに印をつける解答でした。
71と書いてあるのに71mmと思い込み、数直線が7cmよりも短く71mmが測れなかったため、1の位と10の位をひっくり返して17にして、17mmのところに線を引いていたのです。

目盛りのない数直線に対して、「50がこのあたりだから71は大体このあたり」というように柔軟に数字を使いこなせないので、無理やり「わかる形」に解釈してしまうのです。
これらは「たつじんテスト」の結果です
「たつじんテスト」とは、認知科学の第一人者であり、慶應義塾大学名誉教授の今井むつみ先生らが小中学生を対象に実施したテストのこと。学力が伸び悩む子どもの課題を個別に明らかにし、指導に役立てることを目的として開発されたものです。
「たつじんテスト」で正答率が低い児童は、「全国学力・学習状況調査」でも学力が低い傾向が明らかになっています。「たつじんテスト」は、子どもの学力を伸ばすための信頼性の高い指標として、教育界から注目されています。参考文献:今井むつみ『算数文章題が解けない子どもたち ことば・思考の力と学力不振』
地頭は記号接地で説明できる
勉強ができる子の「地頭」も、記号接地で説明できます。
ここで、地頭(実用日本語表現辞典)の意味を確認してみましょう。
学校(教育や勉強)で身につけられる知識とはまた別種の、また学校での勉強ではなかなか身につかない種類の、基礎的で汎用的な頭の良さを指す言い方。思考の回転の速さ、論理的な考え方、柔軟で洗練された発想力、あるいはコミュニケーション力などが念頭に置かれることが多い。
「基礎的で汎用的な頭の良さ」を支えているのは、ありふれた言葉や数字の知識です。それらは学校で学ぶ以前の当たり前の常識で、大人が常識だと思っているようなもの。これらの知識が記号接地していることが大切になります。
一般的には「地頭=思考の速さや柔軟さ、コミュニケーション力」などを指しますが、その土台には「当たり前の知識が幅広く、正しく使える」ことがあるのです。
たとえば、日常会話でちょっと難しい言葉が出てもすぐに理解して返せる子。
これは特別な才能ではなく、言葉の意味がきちんと接地しているからこそできることです。
地頭がいい子とそうでない子の差は、解き方の工夫以前に当たり前の知識が接地しているかどうかの差だったのです。
学校の授業だけだと記号接地しにくいことも……
「地頭=当たり前の知識が記号接地していること」といっても、それを学校の授業だけで身につけるのは難しいのが現実です。
学校では教科書に沿って学習が進み、授業内で教えてもらうのはどうしても新しい知識や問題の解き方に寄ってしまいます。基礎的な知識であればあるほど「当たり前にできる」と思って見過ごされてしまいやすい状況です。そのためサポートが不足し、子どもたちは学びについていけなくなってしまう場合があるのです。
しかし、本当に大切なのは、基礎的な知識を他の知識とつなげられる 「生きた知識」にすることです。
▽第2回のタイトルは
「地頭がいい子は、ありふれた言葉・数字の『たつじん』なだけ」
地頭がいい子どもの頭の中では、どのようにして生きた知識が作られているのかについて、お話ししていきます。


