【松本学園長×ヨンデミー】入試は知識では解けない! 自分のアタマで考える粘り強さの育て方
2026.06.04

「本を読むと、語彙力や読解力が伸びる」
そう聞くと、納得しやすいかもしれません。けれど浜学園・松本学園長は、読書によって変わるのは“テストへの向き合い方”だと話します。見たことのない世界を想像する力、知らない問題にも粘り強く向き合う力、自分とは違う意見を受け入れる力。
中学受験を支える「非認知能力」は、読書でどう育つのでしょうか。

松本茂先生
浜学園学園長。浜学園講師歴26年。
社会科主席主管を13年間務め、2022年4月に学園長就任。
親子で時事問題を学ぶWeb動画『かれとぴ』(朝日小学生新聞×浜学園)の配信など塾内外で精力的に活動し、小学生の社会科リテラシー向上に努めています。

笹沼颯太
株式会社Yondemy代表取締役。
筑波大学附属駒場中・高等学校、東京大学経済学部卒業。
YondemyのMissionは「日本中の子どもたちへ、豊かな読書体験を届ける」。
日本中の子どもたちの読書離れという課題を解決するために、「読書を習うという文化を作る」というテーマを掲げ、子どもが読書にハマるオンライン習い事「ヨンデミー」というサービスを提供している。
目次
- 読書で変わるのは、テストへの向き合い方——中学受験を支える「非認知能力」
- 読書と非認知能力① 見たことのない世界を想像する力
- 読書と非認知能力② 学びを自走させる知的関心
- 読書と非認知能力③ 自分とは違う意見を受け入れる力
- 読書は、受験勉強だけでは育ちにくい力を育てる
読書で変わるのは、テストへの向き合い方——中学受験を支える「非認知能力」
笹沼:
浜学園でYondemyをご利用いただいたご家庭から、読書量が増えただけでなく、国語や学習面での変化を感じる声が届いています。
初見の文章でもつっかえずに読めるようになり、長文問題に対して「できた」「読めた」と言うようになりました!
塾で毎週受ける国語のテストが、7月ごろから5割ほどに低迷していましたが、9月後半から8〜9割の点数を取れるようになりました。また、毎月の模試でも今まで平均点以下だった国語が、今月は(自宅受験ですが)平均点を大幅に上回る点数が取れました。
読書で語彙力や読解力が育つ、というのはイメージしやすいと思います。
ただ、こうした声を見ていると、変化はそれだけではないようにも感じています。
松本先生から見て、読書によって子どもたちにどんな変化が起きていると思われますか。
松本学園長:
今回の結果は、読書をすることで、テストへの向き合い方が変わったことを表しているのだと思います。
これまでテストというものを、自分が教えてもらったことや、知っていることを答えるものとして捉えていた子が、本を読む中で少しずつ変わっていく。
本を読んでいると、途中の話から「この先はこうなるのかな」と想像しますよね。そして最後まで読むと、自分の想像が合っていたのか、合っていなかったのかがわかる。そういう経験を積んでいくことで、テストでも、自分が今知らないことであっても、少し頑張って想像してみる。「こういうやり方があるかな」と考えてみる。そういう向き合い方ができるようになったのではないかと思います。
笹沼:
なるほど。読書では「粘り強さ」そのものが育つんですね。よくイメージされる語彙力や読解力だけでなく、テストへの向き合い方そのものが変わると。
それは、浜学園さんでも重視されている「非認知能力」に関わる力なのでしょうか。
松本学園長:
そうですね。
どうしても低学年の間は、「忍耐」という言い方をすると、少し修行のように聞こえてしまうんですけれど、わからないと言って終わってしまう状態から、少し変えていく必要があるんです。
わからないから、もう終わり。しんどいから、泣いてみよう。わーっと暴れてみよう。
そういう方向ではなくて、違う方法を考えてみる。やり方を変えてみる。質問してみる。前後から想像してみる。そういう粘りの部分ですね。
笹沼:
感情的にならずに、難しい問題に向き合う力は中学受験を通して、必要な力ですね。
松本学園長:
「非認知能力」という言葉は、「非」とついているので、認知能力を否定しているように聞こえるかもしれません。でも、そうではありません。非認知能力があることで、認知能力の伸び方や速度に差がつくのだと思います。
知識を覚える、解き方を身につけるという力ももちろん大切です。ただ、その力を伸ばしていくためにも、わからないものに出会ったときに粘って考える力が必要になるんです。
笹沼:
認知能力を伸ばすためにも、非認知能力が欠かせないのですね。
さて、今回は、読書と関わりの深い非認知能力について、3つのテーマを取り上げます。中学受験に向き合う中でのお悩みをもとに、松本さんにお話を伺っていきます。
読書と非認知能力① 見たことのない世界を想像する力
笹沼:
ここからは、保護者さまから寄せられたお悩みをもとに、読書と非認知能力の関係について、3つのテーマで掘り下げていきたいと思います。1つ目のテーマは、読書と想像力です。
今回取り上げるご質問はこちらです。
Q. 中学入試の問題では、子どもが実際に体験したことがない物事が描かれることがあります。戦争や時代小説など、子どもが経験していない題材は、どうしたら解けるようになりますか?
実際の入試やテキストでも、戦争に関する場面での心情を読み取る問題や、父親の立場を想像する問題など、子どもの日常からは少し遠い題材が出てきます。

松本先生、こうした問題を解くには、どのような力が必要なのでしょうか。
松本学園長:
基本的には、国語の文章というのは、子どもが知らないこと、経験していないことが出るものなんです。戦争や時代小説もそうですし、父親になったこともないわけですよね。そうすると、そこに想像を働かせないといけない。
ただ、文章の中にはヒントが隠されています。前後の文脈を読んだり、会話に注目したりすることで、完全にはわからなくても想像できる。選択肢があるのも、そのヒントから導けるようになっているからです。
だから大事なのは、「経験したことがあるかどうか」だけではありません。文章の中にあるヒントを見つけて、そこから想像する経験を積んでいるかどうかなんです。
笹沼:
なるほど。戦争や時代小説、親の立場のように、実際には経験できないことでも、文章中のヒントから状況や心情を想像する力が大事なんですね。
松本学園長:
そうですね。子どもたちは、毎日の日常生活の中でも新しいことを学んでいますし、新しい経験もしています。ただ、それには限界があります。
そこで大事なのが、いわゆる疑似体験です。これが読書なんだと思います。読書は、時代も飛び越えることができます。国境を越えることもできます。
時には子どもにとって難しいこともあるかもしれませんが、興味を持って少しずつ触れていくことで、だんだん想像して読めるようになっていく。そこに、読書の力があるのだと思います。
笹沼:
入試に出そうな題材を全部読ませなければいけない、ということではなくて、いろいろな本を読む中で、知らない世界に触れる経験を少しずつ増やしていく。その積み重ねが、初めて見る文章に出会ったときの足場になるんですね。
松本学園長:
はい。子どもがテストから帰ってきて「難しかった」と言う時は、自分の経験の中にないもので、ヒントもわかりにくかったということだと思います。
逆に「やさしかった」と言う時は、ある程度疑似体験したことがあるものだったり、ヒントが明確に出ていたりする。そのレベル感が、子どもによって違うんです。そして、それが国語の得意不得意を分けているのかもしれません。
笹沼:
読書は単に知識を増やすだけではなく、知らない世界に出会ったときに、ヒントを拾って想像する練習にもなる。だからこそ、中学入試で問われる「見たことのない世界を想像する力」を育てるうえで、読書が大切なんですね。
読書と非認知能力② 学びを自走させる知的関心
笹沼:
2つ目のテーマは、読書と知的関心です。今回取り上げるご質問はこちらです。
Q. 学習漫画を読んでくれたら、勉強した時にも頭に入りやすくなると思うのですが、子どもがそういう本を手に取ってくれません。どう声をかけたらいいですか?
近年の入試では、SNSと承認欲求、物流2024年問題、AIや大規模言語モデルなど、社会的・時事的なテーマも出てきます。

こうしたテーマに日頃から関心を持てているかどうかは、学びや入試問題への向き合い方にも関わってくるように感じます。では、子どもの知的関心はどのように育てていけばよいのでしょうか。
松本学園長:
子どものことなので、急にというのは、基本的にはなかなか難しいんですね。ここで、保護者の方の思いと、子どもの成長との間にギャップが出ます。
このご質問でも、「漫画」ではなく「学習漫画」と言っているところで、きっと保護者の方が、子どもをちょっと前に進ませようとしているのを感じます。
笹沼:
せっかく読むなら、受験に役立つ本を読んでほしい、という思いですよね。
松本学園長:
そうですね。でも、子どもの世界はまだ狭いです。その中で起こったことは楽しいし、興味もあるんですが、自分の世界に取り込めないものは、基本的には何のことかわからない世界なんです。
だから、漫画でもいいんです。絵本でもいいし、なんなら絵でもいい。まずは、子どもが自分の世界に引き込めるものから始めることが大事です。
笹沼:
むしろ、最初から学習効果を求めすぎると、本そのものが「テストされるもの」に見えてしまうのかもしれません。
松本学園長:
「これが入試に役立つよ」と言ったって、入試自体が子どもの世界にないので、そこに役立つと言われても、子どもの世界には入っていかないんです。
それよりも、もう少しゆっくり始めてあげないといけません。いきなり進化の過程の一番上まで持っていこうとするのではなく、子どもが自分の世界に引き込めるようなものから始めてあげてください。
笹沼:
知的関心は、親が読ませたい本からではなく、子どもが「面白い」と思える入口から育つのですね。
楽しいから読む。読むから知る。知るから、もっと知りたくなる。その積み重ねが、学びの土台作りになる。
松本学園長:
そうですね。子どもって、意外と面白い発想を持っています。それを受験と考えてしまうと、保護者の方には面白くも何ともなく聞こえるかもしれません。
でも、「子どもの世界ってそんなもんなんだな」と思って聞いてあげると、意外と面白かったりするんです。発想はとっても豊かなので、そこを大事にしながら、少しずつ本に合わせていくのが大事ですね。
読書と非認知能力③ 自分とは違う意見を受け入れる力
笹沼:
3つ目のテーマは、読書と意見を受け入れる力です。今回取り上げるご質問はこちらです。
Q.「筆者の考えを書きなさい」という記述欄に、自分の考えを書いてしまいます。何を教えたら、正しく答えられるようになりますか?
国語の読解では、自分の意見を述べる前に、まず筆者の考えや登場人物の気持ちを受け止める必要があります。こうしたお子さんには、何を教えたらよいのでしょうか。

松本学園長:
論説文のような文章が出題され始める3年生ぐらいの国語の授業を見に行くと、大体クラスに1人ぐらい、先生が音読して聞かせている途中で、ことごとく否定する子がいるんですね。そういう子は、自分の意見で通してしまうので、国語のテストではことごとく出題者の意図から外れてしまう感じになります。
笹沼:
筆者の考えを読む前に、「自分はそう思わない」となってしまうんですね。
松本学園長:
そうですね。だから、「あ、いろんな意見があるんだな」と思う経験が大切なんです。
浜学園では、低学年で「ヨンデミータイム」という時間を取っていますよね。
笹沼:
読んできた本について話す時間として取り入れていただいています。
松本学園長:
最初は、本のタイトルぐらいしか言えないこともあります。でも、少しずつ登場人物のことを話したり、自分が面白いと思ったところを言ったりするようになるんです。
そこで、他の子の話を聞くチャンスを持つことが大事なんですね。他の子は、自分とは違うことを言います。同じものを見たり、同じ本を読んだりしても、人によって違う感想を言う。
その時に、先生がその意見を否定しないわけです。「ああ、そうなんだね」「楽しかったんだね」「面白かったんだね」と肯定する。そうすると、自分の答えではないものも肯定されることがある、という経験になります。それが、他人の意見を受け入れる力につながっていくのだと思います。
笹沼:
これは家庭でもできそうですね。子どもが本やテレビ、ニュースについて何かを話した時、すぐに正解・不正解で判断しない。少し独特な意見であっても、まずは受け止める。そのうえで、「お母さんはこう思った」「お父さんはこう考えた」と、別の見方を伝える。
松本学園長:
ご家庭でも、お子さんの答えと、お母さんやお父さんの答えが違っても、どちらも丸でいいんです。よほど全く違うことを言ったら修正は必要かもしれませんが、少し独特であっても、それを否定しない。
「その意見もある。でも、お母さんはこう思った」とか、「お父さんはこう考えた」とか。そうすると、「いろんな答えがあるんだな」と感じられます。こういう経験があると、成長とともに、相手の意見を受け止められるようになっていくと思いますよ。
読書は、受験勉強だけでは育ちにくい力を育てる
笹沼:
ここまで、読書で育つ非認知能力について伺ってきました。改めて、読書で育つのは語彙力や読解力だけではないのだと感じます。
見たことのない世界を想像する力。 学びを自走させる知的関心。 自分とは違う意見を受け入れる力。 どれも、親がその場で「こうしなさい」と教えようとしても、なかなか教えきれない力ですよね。
だからこそ、受験家庭にとって読書は「勉強の邪魔」ではなく、受験勉強だけでは育てにくい力を、楽しく育てられる時間なのだと思いました。Yondemyとしても、お子さんが楽しみながら本の世界を広げていけるよう、読書の時間を支えていけたらと思っています。
最後に、松本先生から保護者の皆さまへ、改めてメッセージをいただけますでしょうか。
松本学園長:
私たちは受験勉強をさせる立場ですので、文章を一部分だけ切り取って、「いかにも授業」という形で扱うことがほとんどです。
でも、低学年でヨンデミータイムなどを見ていると、改めて、本を読むことって本来楽しいことなんだなと感じます。その楽しさは、腹を抱えて笑う楽しさだけではありません。想像力をかき立てられる楽しさでもあるんです。
そういう経験を、ぜひしてほしいなと思います。そこから受験勉強に入ってもらうと、スムーズに入れるのではないか。私は、その効果が出てくることをとても期待しています。
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