【佐藤ママ×ヨンデミー】「9歳の壁って、ありますよ」ーー中受で越えなければならない「精神年齢」と「学習語彙」の壁
2026.06.03

「学年が上がったら、急につまずいているみたい」「受験に向けて難しくなるのに、このままで大丈夫……?」そのつまずきは、「9歳の壁」かもしれません。中学受験に挑むうえで知っておきたいこのテーマを、浜学園アドバイザーの佐藤ママと一緒に掘り下げます。
9歳の壁は本当だった! 小4の教科書の「手のひら返し」
笹沼:子どもの学びのつまずきとして、「9歳の壁」という現象がよく言われます。小3〜小4ごろに学習内容が難しくなり、一気に勉強についていけなくなってしまう現象です。
佐藤ママ:「9歳の壁」って、本当にありますよ。
教科書を小学校1年生から6年生まで、順番に見るとよくわかります。3年生まではやさしく作られていて、大人が優しい気持ちで作って子どもに渡しているのがわかる。
でも、4年生の教科書は「あなた、3年生までちゃんとやったよね。ここから頑張ってね」という難しさになる。急に、教科書が手のひらを返すんです。
小3と小4の教科書は、もう本当に壁があります。力が追いついていないと子どもは落ち込みます。
笹沼:つまり、小4で急にできなくなるのは、「頑張っていない」「集中していない」という話ではなく、教科書やテキストのほうで一段階レベルが上がるから。そこで、言葉の準備ができていない子はつまずいてしまう。
佐藤ママ:そうです。
笹沼:その壁につまずいたまま、5・6年生で受験に挑んでいるお子さんもいるはずです。ストレスになってしまっている可能性がありますね。
会話は得意でも、授業がわからない? 学習語彙の罠
笹沼:「教科書が難しくなる」とはどういうことか、もう少し具体的に考えてみましょう。
テキストやテストの問題が読みづらくなる「9歳の壁」の時期には、生活の中では出てこない言葉が増えるんですよね。この「生活語彙」と「学習語彙」の違いが、見落とされやすいのだと考えています。
たとえば、小5の社会の教科書。専門用語や、地名が想像できないだけでも読めなくなります。「瀬戸内」は住んでいなければイメージしづらいですし、「製鉄業で栄える」「資源を確保する」なんて日常会話では使わない名詞・動詞もたくさん。文章理解が止まってしまいます。

さらに、単純に見える言葉でも、教科や文脈によって意味が変わります。たとえば「割る」は、算数では割り算の意味になり、理科では「水で薄める」という意味になる。社会では「人口が1億人を割る」なんて表現もありますね。一方、子どもにとって身近な「割る」は、「ガラスを割る」かもしれません。
こういう曖昧さが積み重なって、わからなくなっているお子さんも多いと思います。
佐藤ママ:「会話は得意なのに」と言うけれど、子どもの会話の話題は限られていますから。小3、小4になると、ふつうの会話と授業の会話が全然違ってきますね。感覚としては、小4からは中学生の会話に近づいていくように感じています。
笹沼:「うちの子は、よくしゃべるから大丈夫」と思っていても、それは生活の中の会話ができているだけかもしれない。授業の言葉できちんと考えられるかは別問題ですね。
新聞が最強! 佐藤ママ流「おしゃべり学習」
笹沼:では、学習語彙や大人の言葉は、どこからインプットすればいいのでしょうか?
佐藤ママ:そうなると、本や文章を読むことからしか得られません。
本を読んでいるうちに学習語彙が出てきます。子どもが「え?」と思った言葉を、説明してあげる。そうすると、その言葉が子どものものになります。この繰り返しで、語彙が増えていくんです。
笹沼:単語を覚えさせるのではなく、子どもの考え方を育てる行為に近いですね。
佐藤ママ:その通りです。
それに、家庭では新聞が使いやすいんですよ。
日常会話は「ご飯食べなさい」や「お風呂入りなさい」くらいでネタがないから。うちではテレビも見ないので、新聞を話題に使っていました。毎日新しい記事が届くので、その中から子どもにウケそうなものを見つけて話すんです。
新聞の記事には、日常会話では使わない言葉も出てきます。それを使ったおしゃべりをするわけです。子どもが「それ、どういうこと?」と聞いたら、「こういうことだよ」と説明する。それを毎日繰り返していたら、自然に語彙は増えます。こういう「おしゃべり学習」には、新聞が一番いいんですよ。
笹沼:「おしゃべり学習」、いいですね。新聞を教材として読ませるのではなく、親が読んで、会話のネタにすることで、大人の言葉や学習語彙が入ってくる。
佐藤ママ:「読んで学びなさい」「音読しなさい」と言うと、子どもは緊張してしまう。だから、子どもと「おしゃべり」するようにしています。時事用語でも、「こんなことが話題だよ」と言ったら、耳に入ります。耳学問って、子どもにとってはすごく楽なんです。授業で出てきたときも「あ、聞いたな」と思い出しやすい。
同じ話を何日も繰り返すと、子どもに「もうそれ、100万回聞いた」と言われますが、それは私の言葉が子どもの耳に入っているサインなんです。だから私は、「悪いけど、100万1回聞いて」と言って、まだしゃべるんです。
教えるのではなく、おしゃべりで伝えることで、子どもたちの耳に入るハードルが低くなるんです。
「9歳の壁」の正体は、精神年齢の壁?
佐藤ママ:「9歳の壁」は、「精神年齢」の壁でもあると思います。
笹沼:精神年齢、ですか?
佐藤ママ:はい。
学習語彙をたくさんインプットして、大人の言葉に近づいて、精神年齢を上げておく。すると、算数が苦手でも、「どうアプローチしようか」と落ち着いて考えられる。「勉強は面倒だけど、これをやろう」と大人びた判断ができる。
精神年齢が壁を超えていないと、すべての科目がアウトになるんです。
笹沼:なるほど。教科書の難しさとは、また違った側面ですね。
佐藤ママ:必ずしも、漢字や知識がすべてではないんですね。国語をちゃんと鍛えている子は、精神年齢が伸びているので、この壁を越えやすくなります。
笹沼:大人びた判断や想像力は、そもそも中学受験という長い戦いを乗り越える上で欠かせないですね。「9歳の壁」の正体のひとつが、精神年齢にもあるとは……驚きですが、納得します。
受験を乗り越える親子の信頼関係
佐藤ママ:さらに言えば、受験は信頼関係がないと成功しません。そのために、大人の会話ができることってとても大切なんです。
笹沼:まさに。日々の学習が忙しく、親子ともにプレッシャーで心が折れそうになることもあるなかで、「ケンカしてしまう」「なんで伝わらないんだろう」という声はよく聞きます。
佐藤ママ:信頼関係をつくるのは、言葉しかないですから。「9歳の壁」を越えると、親子の会話も変わり、だんだんと大人の会話ができるようになっていきますね。
保護者の方は、子どもが子どもっぽい考え方をすると「かわいい」と思って、そのままにしてしまう場合があります。でも、いつまでも子どもは子どもじゃない。最終的には、ちゃんとした大人になることを目指しているわけです。
笹:大人の言葉を育てることは、その過程のひとつでもあるわけですね。
佐:4年生、5年生でも、9歳の壁を越えていない子はいます。その場合は、いまから戻って越えればいいんです。
まずは、現在地を把握してほしい。子どもがどこに立っているのか、9歳の壁までどのくらい距離があるのかを見ないといけません。
後編では、受験につながる「言葉の力」をどう育てるのか、浜学園でのデータ分析とともに見ていきます。
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