教えて! 今井むつみ先生①:思っていたよりも「絵本」が大切でした
2026.06.04

先日、Yondemyの顧問に就任していただいた、認知科学の第一人者であり慶應義塾大学名誉教授の今井むつみ先生との勉強会を開催しました!
これまで子どもの読書に向き合い続けてきた私たちでも、「そうだったのか!」と思うような新発見がいくつもある、良い勉強会になりました。
今回は、今井先生から学んだ「絵本の大切さ」についてのお話を、皆さんにいち早くお届けします!
▽今井先生顧問就任記念の対談記事もぜひご覧ください。
目次
- 「死体を煮て溶かしている」衝撃の答えの裏にあった、子どものつまずきの理由
- 雪合戦を知らない中学受験生も……どうしたらつまずかないの?
- 体験できなくても大丈夫! 絵本を読むことが代わりになる
- 英語多読の教材は、日常の記号接地にも効果的だった!
- 日本では、名作絵本の数々で記号接地すべし!?
「死体を煮て溶かしている」衝撃の答えの裏にあった、子どものつまずきの理由
この日のテーマは、「子どもが読解でつまずく理由」でした。
先日社内でシェアされ話題になった、子どもの『ごんぎつね』の解釈に関する記事について、お話をお聞きしました。その記事では、小学生が『ごんぎつね』のお葬式の場面を正しく解釈できないと書かれていました。

その場面は、兵十の母親のお葬式で、女性たちがかまどで何かを大きな鍋でぐずぐず煮ている描写。お葬式の参列者に振る舞う食事を調理している場面です。
ところが、子どもたちは「女性たちは何を煮ているか?」という質問に、
「死んだお母さんをお鍋に入れて消毒している場面だと思います」
と答えたのです。
▽詳しい記事の内容はこちらをご覧ください。
このエピソードに衝撃を受けた私たちは、子どもの学びのメカニズムを研究している今井先生に、
「子どもたちは、どうしてこんなに飛躍した答えを出したのでしょうか?」
と聞きました。
すると意外にもシンプルな答えが返ってきたんです。
「体験したことがないんだから、仕方ないですよね」
今井先生はこう言います。
「今の子どもたちって、お葬式に出たこともない子がほとんどではないですか? かまどを見たこともないですよね。村中に振る舞うほどの大きな鍋で煮炊きするところを見たこともないと思います。だから、参列者に料理がふるまわれる場面を想像できなかったんじゃないでしょうか」
「子どもは、子どもなりにしっかり考えているんです。でも、『ごんぎつね』の中で描かれる生活と今の生活は違いすぎるので、イメージがつきにくいのも当然。だから、子どもたちは自分の知っている形で答えをひねり出したんだと思いますよ」
ただの衝撃的な間違いとして捉えていた子どもたちの回答にも、実は理由があったことを知ると、見方が変わりますよね。
雪合戦を知らない中学受験生も……どうしたらつまずかないの?
「体験したことないものというと……先日、小学5年生のお子さんが『雪合戦』を知らないという話を聞いて驚いたんです」
私たちが思い出したのは、中学受験専門塾である伸学会の菊池先生に取材した際にお聞きしたエピソードでした。「『雪合戦』を国語で一から教えるのは無理じゃないかと感じていた」という菊池先生の言葉が印象に残っていたのです。
「国語の授業でもサポートしてあげられないので困っていると伺ったんです。こういう、子どもが体験したことがない物事でつまずいてしまうのって、どうしようもないのでしょうか……?」
今井先生に尋ねたところ、
「いろいろな絵本を読んだらいいんじゃないでしょうか」
との答えが返ってきました。
体験できなくても大丈夫! 絵本を読むことが代わりになる
今井先生は、絵本を読むことの効果について、このように教えてくださいました。
「絵本は、記号接地の入り口にぴったりだと思います。例えば先ほど話した『ごんぎつね』に出てくるかまどは、日本の昔話にはよく登場しますよね。だから昔話をいくつか読んでいれば、ずいぶん想像しやすくなります」
💡記号接地とは?
「記号接地」とは、「言葉や数字(記号)を、現実の体験と結びつけて理解すること」を指します。
例えば、「いちご」という言葉。
辞書を引けば、「甘い」「赤い(白いものもある)」「バラ科」のような情報はわかります。しかし、辞書を引いただけではいちごの「味」や「香り」はわかりません。これらはいちごを実際に食べて初めて理解できるものです。こうした現実の体験と結びつけて、言葉や数字(記号)を理解することが記号接地です。
「例えば、海外の朝ごはん。私が好きだった本もそうだったのだけれど、海外の絵本では朝ごはんの様子が描かれるときに、よくシリアルを食べているんです。そういう何気ないシーンの絵を見て、『朝ごはんの定番はシリアルなんだ』と知る。すると、文章で海外の朝ごはんのシーンが出てきた時にはシリアルを想像するようになります」
今井先生ご自身も、海外の日常シーンを想像できるのは絵本がきっかけだったと感じているそうで、このようなお話もお聞きすることができました。
「雪合戦」も同じように学ぶことができそうですよね。
雪の日を描いた絵本はいくつもあります。
- 「楽しそうに雪玉を投げている様子」を見て、「雪合戦って楽しい遊びなんだ!」とワクワクしたり、
- 「雪玉が当たって悔しそうにしている様子」を見て「意外と痛いのかな……?」と気になったり、
- 「素手で雪をさわって冷たそうな顔をしている様子」を見て、手がかじかむ感覚を想像したり……
このような読書体験が、体験したことがない「雪合戦」への記号接地につながるのです。
英語多読の教材は、日常の記号接地にも効果的だった!
「確かに、海外では絵本が教材として使われていますね。『オックスフォード・リーディング・ツリー』は、日常的なシーンへの記号接地にも効果があるように作られていました」
ヨンデミーの代表・笹沼は、過去に英語多読の講師をしていました。
その頃に使っていた教材「オックスフォード・リーディング・ツリー」は絵本が文章の難易度順にレベルが分けられているだけではなく、日常の話を中心に作るよう工夫されていたというのです。
笹沼は、ORT(オックスフォード・リーディング・ツリー)の絵本と記号接地の関係をこう話します。
「ORTには、日常シーンが網羅されています。例えば、『Go to the park』や『Ice cream』といったお話があって、『アイスクリームを買ったけれど、転んでしまって、ベチャッと落としてしまう』というような、あるあるな展開になっています。ORTを通して読むと、日常的なシーンにはまんべんなく記号接地することができるように作られているんですよね」
▽「オックスフォード・リーディング・ツリー」にはこちらからアクセスできます。

日本では、名作絵本の数々で記号接地すべし!?
「日本でもこんな教材があるといいですよね」と今井先生と話しているうちに、気がつきました。
「名作絵本は、記号接地につながるのではないでしょうか?」
実際に、よく読まれている絵本や幼少期に読んできた絵本は記号接地のきっかけになっていそうでした。
例えば『しろくまちゃんのほっとけーき』。卵を落として割ってしまったり、ボウルから中身が飛び出してしまったり。そんな描写を読むと、「料理」への記号接地が進みます。
この絵本が好きなお子さんは多いようで、ヨンデミーのご受講生のお話でも読み聞かせの定番絵本の一冊と言われていたことも!

他にも「ぐりとぐら」シリーズには、『ぐりとぐらのえんそく』『ぐりとぐらのおおそうじ』『ぐりとぐらのかいすいよく』などがあり、ぐりとぐらと一緒に日常の様々なイベントを疑似体験することができます。

あるヨンデミーのメンバーは、「小さいころ『かさぶたくん』が大好きだったけど、この絵本を読んでかさぶたに記号接地したかも!」なんてことも話していましたね。

このように、記号接地の入り口となる絵本は身近にたくさんあります。「絵本がきっかけでどんなことを知っただろう?」と、自分の絵本遍歴を振り返るきっかけにもなりました。
「ずっと絵本を読んでいて心配」
ヨンデミーには、こんな相談が寄せられることもあります。
ですが、絵本をたくさん読んでいる時にこそ、お子さんはぐんぐん成長中なのです。
絵本をたっぷりと読むことが、その後の学びや読書を助けてくれることを知ることができた、学びの多い勉強会になりました。
今井先生の知見を活かして、今後さらにサービスを磨いていきたいと思います!
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https://forms.gle/8pBLjUQR7XvTh46k7
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今井先生にお聞きしたいテーマなどもご自由にお書きください。
▽「子どもたちが音読でつまずくのはなぜ?」をテーマにお話を伺った第2回の勉強会のレポートもぜひご覧ください
▽今井先生との勉強会については、ラジオでもお話ししています。

