読む力が求められるのはむしろ国語じゃない教科だった!?
2026.06.03

小学生の学校生活には、「読む」という作業が散りばめられています。
前回は国語の教科書のヨンデミーレベルの分析結果をもとに、読む力がつまずく原因になることを解説しました。
ですが、読めないとつまずくのは国語だけではありません。読む力がないと、算数・理科・社会でも、教科書の説明が読めなかったり、問題文が読めなかったりします。
国語なら読解に時間をちゃんと取って、先生がその作品の読み方を丁寧に教えてくれますが、他の教科では「読む」ことへのサポートはほとんどされません。ですから、むしろ他の教科の方が「読む力」が、子どもの学びの差につながりやすいとも考えられるのです。
そこで、今回は他の教科の教科書のヨンデミーレベルの分析結果について解説していきます。
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目次
- 算数や理科でつまずくのも読む力が原因?
- 小学4年生は子どもが特につまずきやすい時期
- 教科書の説明文も難しい……
- 算数・理科・社会の教科書のヨンデミーレベルを大公開!
- 【算数】小学1〜6年生
- 【理科】小学3〜6年生
- 【社会】小学3〜6年生
- 難しい内容こそ、読む力で乗り越える!
算数や理科でつまずくのも読む力が原因?
小学4年生は子どもが特につまずきやすい時期
まずは国語以外の教科でも「読む力」が欠かせない理由について、お話しさせてください。
突然ですが、小学校の勉強で子どもが特につまずきやすい時期をご存知でしょうか?
お子さんが特につまずきやすいのは、小学4年生ごろ。「小4(9歳)の壁」と呼ばれています。
この時期につまずく理由は、学ぶ内容が「目に見えるもの」から「目に見えない概念」に変わるからだと言われています。
例えば、分数・小数の計算問題。この単元を習うのが小学4〜5年生です。
それまでの算数は「リンゴが3つ」「友達が5人」など、具体的な数を扱う問題が中心でした。
しかし、分数や小数の計算は、子どもたちが日常生活で触れてきたものの数を数える計算とは考え方が違います。そのため、多くのお子さんが「難しくてついていけない」と感じてしまうのです。
分数・小数の計算が苦手だと「割合」や「速さ」の単元も苦手になりやすいです。この単元でのつまずきをきっかけに、苦手が重なり、いつの間にか算数そのものが嫌になってしまうお子さんもいます。

教科書の説明文も難しい……
目に見えない概念は、説明文も難しいことがほとんどです。
保護者さまは、お子さんに分数や小数、通分の説明をお子さんに求められたら、どのように説明しますか?
つい説明が複雑になってしまったり、少し難しい言葉を使わないと説明できなかったりするのではないでしょうか。
教科書は子ども目線でわかりやすく書かれていますが、分数などの「数を数えるときとは別の数字」を正確に教えるためには少し複雑な説明にならざるを得ません。
小学4年生以降の学習内容についていくためには、この難しい説明文を正しく読み取り、頭の中で正しくイメージする力が必要です。そのために、算数や理科でも高い読解力が必要になるのです。
算数・理科・社会の教科書のヨンデミーレベルを大公開!
【算数】小学1〜6年生
算数の教科書は小学2年生から4年生にかけて、文章のヨンデミーレベルが国語の教科書に匹敵するレベル、小学2年生では国語を上回っていることがわかりました。

小学1年生は絵本と同じくらいのレベルですが、小2以降は、本を読み慣れている子でも読み応えのある児童書レベルに一気に難易度が上がります。

この分析結果の背景には、分数のような抽象的な概念を教えるために、文章が複雑になっていることがあります。
教科書の内容を見ていきましょう。
例えば、小学3年生の教科書に載っている円の単元の説明がこちらです。
1つの点から長さが同じになるように描いたまるい形を、円といいます。その真ん中の点を、円の中心、中心から円のまわりまでひいた直線を、半径といいます。
1つの円では、半径はみんな同じ長さです。『新しい算数 3上』(東京書籍)2024年度版

一見、図があるのでわかりやすいように思えますよね。
しかし、図を使って理解できるのは、読む力のある子だけです。なぜなら、図と文章を照らし合わせ、「この説明が、図のどの線を指しているか」を正しく認識する必要があるからです。
読む力がついていない子どもは、「その真ん中の点を、円の中心、中心から円のまわりまでひいた直線を、半径といいます。」という説明の中で迷子になってしまい、図と文章を照らし合わせることが難しいのです。
もう一つ、つまずきやすい文章を紹介します。
1.5kmを5分で走る人と、50mを8秒で走る人がいます。どちらの方が速いでしょうか。
『新しい算数 5下』(東京書籍)2023年度版
単位が異なる速さの文章題です。
1.5÷5=0.3
50÷8=6.25
のように、数字だけ追って式を立ててしまう子どもは多いもの。
大人からすれば、
「なんでちゃんと読まないの?」「ちゃんと考えて解いているの?」
と思ってしまいますよね。
これも実は読む力が関係しています。
文章を読んで頭の中で状況を整理し、数字をどのように比較するかをイメージできないと、子どもたちが知っている計算に無理やり当てはめて解くことになり、正しく式が立てられないのです。
【理科】小学3〜6年生
理科の教科書を分析したところ、算数と同様、ヨンデミーレベルは「読み応えのある児童書」レベルと高い難易度を示していました。

理科は馴染みの薄い専門用語が多く使われ、子どもがイメージしにくい学習内容が多いのが特徴です。文章から正確にイメージできる読解力が求められます。
こちらは小学5年生で習う水溶液の説明です。
水よう液の温度を下げると、水にとけたミョウバンはとり出すことができますが、食塩はほとんどとり出すことができません。
出典:『新しい理科 5』(東京書籍)令和6年度版
まず、「水溶液」や「ミョウバン」という単語は、子どもが日常生活で耳にしない理科用語のため、読みにくく感じます。
そして、この文章で最もつまずきやすいのが、「ミョウバンはとり出すことができる」という表現です。
理由は、子どもが知っている「取り出す」は、箱からものを取り出す動作だから。「透明な液体に溶けて見えなくなったミョウバンを取り出す」ことは、動作として全くの別物です。

子どもたちが「透明な液体から取り出すってなに?」と混乱するのも、当然なのです。
このように当たり前に書いてある説明も、実は文脈を読む力と、目に見えない現象をイメージする力を前提としているのです。
【社会】小学3〜6年生
社会の教科書は、小学4年生以降は半分以上のお子さんにとって難しいレベルであることがわかりました。

社会が難しい原因は、文章の難しさに加え、子どもが初めて出会う固有名詞や専門用語が多いこと、そして「一般教養」まで求められる点にあります。
例えば、小学4年生の教科書のレベルについて。
小学4年生のヨンデミーレベルは27〜46なのに対して、教科書のヨンデミーレベルは42と高めです。もしお子さんの現在のヨンデミーレベルが27だったとしたら、社会の教科書とは15以上の差が開いてしまっており、当然難しく感じます。

このように、お子さんの読む力の伸びを教科書のレベルアップが上回ってしまうことがあるのです。
しかも、社会は初めて出会う固有名詞が多く、正しく読むために教養が必要になります。
こちらは小学5年生で習う製鉄業についての説明です。
鉄を作る製鉄所は、瀬戸内海や東京湾のまわりに多く見られます。鉄をつくるのに必要な原料である鉄鉱石と、むし焼きにしてコークスになる前の石炭は輸入にたよっているので、製鉄所は海に面した場所につくられているのです。
『新しい社会 5(下)』(東京書籍)令和2年度版
「鉄鉱石」や「コークス」などの聞き馴染みのない単語だけでなく、「瀬戸内海」や「東京湾」といった地理的な一般教養も前提とされています。
これらは大人なら当たり前に知っていますし、子どもたちも本や子ども新聞を読んでいたり、意識して天気予報を見ていたら知っている言葉でしょう。
しかし、「全く興味がなく、ゲームしかしていない」という子どもは多いもの。そういうお子さんたちにとっては、この説明は知らない単語やイメージしにくい単語ばかりの非常に難しい説明になるのです。
難しい内容こそ、読む力で乗り越える!
これまで見てきたように、教科書の説明でつまずいてしまうお子さんは少なくありません。すると、授業で教えたい発展的な内容や前の学年よりも難しい内容について、考えることができなくなってしまいます。
例えば、「ミョウバンを取り出す」という文章でつまずいてしまったとしたら、「蒸発」「再結晶」などの発展的な内容を習っても「何が何だかわからない……」なんてことになりかねません。
教科書を読んでも、授業を聞いても、意味がわからないまま時間が過ぎていく。
そんな状態で毎日勉強に向かうのは、苦しいものです。
その結果、子どもたちは丸暗記するしかなく、テストでも当てずっぽうで答えるようになってしまいます。「教科書を読んでも、授業を聞いても、わからない」状態が続くと、当然学びは身につきにくく、つまずきが大きくなってしまいます。
反対に、難しい内容についていけるいわゆる地頭がいい子は、教科書を読んで正しく理解する「読む力」がしっかりついています。教科書に対応できるこの読む力こそが、国語に限らず全ての学びを支えてくれる土台になるのです。
▽第3回のタイトルは「地頭の9割は読む力」
地頭がいい子の読む力の正体に迫ります……!
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